2007年 10月 28日
石塚元太良 『TOKYO 1 0(イチゼロ)』 |
新宿のエプサイトで開催中の石塚元太良の写真展『TOKYO 1 0(イチゼロ)』に嵐の中、足を運んだ。ある被写体があるとき、その後ろには背景がある。普段は背景を構成しているものの一つを無理矢理に被写体に据えた写真を観るとき、妙な違和感を覚えることがある。その違和感は、見慣れぬ被写体それ自体だけによって喚起されたものではない。見慣れぬ被写体の後ろの背景もまた、見慣れぬ背景として姿を変える。被写体にレンズを向けつつも、石塚の本当の意味での「被写体」は「被写体と背景の関係」であるのは明白である。
それは、街中の白いフェンスに映る影を捉えた一連の作品からも覗える。影という存在そのものが、モノ/光/スクリーンの「関係」の中から生まれるものであって、その時間、その場所でしかその影は見られず、次の瞬間には「その影」は「別の影」になってしまう。その一瞬の奇跡的な「関係」を目の当たりにした喜びのようなものが作品から感じられた。
「でもそんなの関係ねぇ」と孤独に気張るのが強さではなく、「関係の中でしか生きられない」と嘆くのが弱さではない。そのように1と0に二分するのではなく、「いかに関係し、いかに生きるか」という1と0の間を意識することの重要性を訴えているように思う。
http://www.epson.jp/epsite/event/07/10.htm
by sound-and-vision
| 2007-10-28 13:08
| REVIEW